新聞と広告の向こう側

新聞のつくり方・広告を読み解く視点

【書評】探偵伯爵と僕 - 子供にこそ一流のものを見せたい

探偵伯爵と僕

作家の森博嗣は「子供にこそ一流のものを」と著書でたびたび書いています。大人は子供の能力を見くびりがちです。「大人の話だから」なんて、たいして難しくもない話を、子供から遠ざけることはよくあります。

10代で頭脳も肉体も完成する

しかし、スポーツでも勝負事でも、最上級の力を持つ者は、子供が多いのも事実です。オリンピックで活躍する選手も十代が多く、将棋の連勝を重ねていた藤井四段も14歳でした。人間は、十代後半には、頭脳も肉体も完成し、あとは少しずつ衰えていきます。

経験というのは、衰えていく頭脳や肉体を補う手管のようなもの。一人の人間の能力のピークはどこか、と考えたら、今よりもずっと昔の少年時代にあったのかもしれません。芸術家の生涯の作品を見ると、最晩年の作品が必ずしも一番良い評価を受けるとは限りません。これも、人間の能力が年齢に比例しない例といえましょう。

 

探偵伯爵と僕

前置きが長くなりました。今回は、夏休みに子供と読みたい本を紹介します。冒頭の森博嗣が書いた「探偵伯爵と僕」。この作品は、著者の「子供にこそ一流のものを見せる」という思想が色濃く反映しているお薦めの一冊です。

内容は、夏休み直前、主人公の新太が、伯爵と名乗る探偵と出会い、親友が行方不明になるという事件に遭遇する話。小学生の高学年なら、十分に読めるやさしい文章で、主人公の子供の視点で物語がテンポ良く展開していきます。

私は、本物や一流のものは、何度読んでも新しい見方ができるもの、と考えます。物語は創作でも、そこに通底するテーマが簡単に答えの出ない「問い」を含んだものだからです。読み手の成長(変化)に合わせて物語の景色も変わります。

夏休みに何を読もうかとお子さんに相談されたら、一緒にこの物語を読んでみてはいかがでしょうか。少年少女だけでなく、かつて子供だったあなたにも楽しめるはずです。

 

探偵伯爵と僕 His name is Earl (講談社文庫)

探偵伯爵と僕 His name is Earl (講談社文庫)