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足の腫れは蜂窩織炎か痛風か│誤診から完治まで

蜂窩織炎治療

左足がくるぶしから甲にかけて赤く腫れだしたのは7月21日のことでした。強い痛みではありませんでしたが、歩くと違和感があります。全体に赤みがかっています。何かにぶつけたり、ひねったりしたのだろうか、と記憶をたどりましたが思い当たりません。前日までは、特に異変は感じなかったのに。

翌日、翌々日は土日で仕事は休み。子どもが、わたしの赤く腫れた足に気づき「どうしたの?」と心配しています。家にいるときは、あまり歩かないので痛みはあるものの不自由は感じませんでした。このときは、湿布でも貼っておけば数日で治まるだろうと楽観していました。

その後は、しだいに腫れがひろがり左足の甲から足首にかけて全体に浮腫んだようになりました。触ると熱を持っています。湿布で痛みは抑えられていて歩くことはできますが、状態は悪くなっています。この頃には、時間をみつけて医者にかかることも考えはじめました。

 

足が腫れたら何科を受診する?

こうした場合は、何科にかかればよいのでしょうか。整形外科、皮膚科、内科、外科。ふつうに考えれば成形外科なのですが、特にぶつけたりひねったりした覚えがないので、悩みます。結局、総合病院の内科か整形外科を受診して、必要に応じて他の科につないでもらうのが良いのではないか、と思い至ります。

でも、この診療プランはなかなか実現しませんでした。理由は、総合病院の診療時間は、午前中に限られているからです。7月の下旬から8月1日までは、外せない顧客との約束で午前中のスケジュールはすべて埋まっていました。今思えば、スケジュールをずらしてでも総合病院を受診するか、個人医院の整形外科の夕診でも受けるべきだったのです。

8月1日。右足の腫れはいっそうひろがりました。歩くことはできますが、足首を曲げるたびに痛みを感じます。どうしても処理しなければならない2つの仕事を終えた夕方には、熱も出てきたようです。早々に仕事を切り上げて、帰宅途中に整形外科を受診することにしました。

 

ネットで調べると蜂窩織炎が疑わしい

実は、整形外科にかかる前にネットで自分の足の症状を調べ、どういう病気かあたりをつけていました。足の甲が腫れる症状はいくつかありますが、わたしの場合は「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という細菌感染による皮下の炎症ではないか、と予想されました。

打撲や捻挫をした覚えがなく、腫れが左足全体にひろがっていることから筋や骨の異常ではないこと。また、足の痛みでは痛風が代表ですが、それにも当たらないと考えました。なぜなら、ほんの数日前に会社で受けた健康診断の結果で尿酸値に異常がなかったからです。それに痛風であれば、足のくるぶし周辺ではなく爪先付近に歩けないほどの激痛が走るはずです。尿酸値、患部の位置、痛みの度合いから総合して痛風の可能性は低いと推論したのです。

蜂窩織炎であれば、放置していても悪化する可能性が高く、最悪の場合は、敗血症などを引き起こすかもしれません。治療には抗生剤を使います。これを手に入れるにも医師の診断と処方も必要でした。そういった理由から、整形外科で診察を受けることにしたのです。

 

信じられない「痛風」診断!?

8月1日の18時を過ぎていたでしょうか。自宅から近いK整形外科を受診しました。自宅から近いという理由以外は、ここを選んだ理由はありません。通院するなら近い方が良いという判断です。しかし、診察してすぐに、わたしはこのK整形外科に訪れたことを後悔しました。

K整形外科では、保険証を受付に渡し、問診票を記入しました。問診票は、個人情報と症状、病歴やアレルギーの有無を書きこむ標準的な書式です。すべて記入して提出すると、10分も待たずに診察室に呼ばれました。患者の数の割に呼ばれるのが早い、というのが率直な感想でした。あとで知ったのですが、患者の大半が、リハビリルームで各自ルーティンの治療を受けているだけなのです。

診察室では70代と思われる医師が問診票を読んでいました。医師の机の上には、なぜか「痛風とは」というラミネートでパウチされた一枚の説明用の資料が置いてあります。このとき、わたしは、この医師は問診票から痛風とあたりをつけていると直感しました。でも、患部を見て血液検査等をすれば、通風を否定するだろうとも考えていました。

 

検査をしない杜撰な診察

しかし医師は、患部を見てこう言いました。「腫れていますね。痛風でしょう。本来は、もっと爪先の方に症状が出るのですが、こういう位置に症状が出ることもあります。痛みも個人差がありますから、初期症状だとこのくらいの痛みで済むこともあります。夏で尿酸値が高くなり結晶が患部に溜まっているのでしょう」

「先生、わたしの尿酸値は高くありませんよ。つい先日、健康診断の結果でわかっているのです。それに打撲やひねった覚えはありませんが、それは大丈夫なのでしょうか」わたしは、遠回しに血液検査もレントゲンも撮影しないで問診票と目視だけで確定診断を出す姿勢に不信感を抱き訊ねました。

医師は「夏は尿酸値が短期間で高くなることもあります。痛風なら結晶が滞っているはずですが、その位置だとレントゲンに映らない可能性があります。それに、打ったりひねったりしたものであれば、もっと患部の色がちがいます。これは痛風の可能性が高いですね」

「痛風ですか…」わたしはこのまま検査もされないで痛風と診断されるのだ、と覚悟しました。そうして本当に痛風でも、このK整形外科は今日限りで通わないと決心しました。痛風か否かが問題ではなく、痛風という答えを導き出す姿勢に疑問があったからです。検査とロジックを積み上げた上での診断であれば医師を信用します。しかしこの老いた医師は、わたしを診察室に入れる前に、痛風と決めつけ、その裏付けとなる検査を一切しませんでした。医師とはいえ、これでは信用できません。

「きょうは、患部に電気と温熱効果のあるライトをあてて、最後に血流を良くする注射をします。これで腫れと痛みはかなり軽減されるとでしょう。湿布も出しておきますから、明日からしばらく通ってください」と医師は続けました。

もし痛風ではなく、細菌の炎症あるいは他の原因による症状だとしたら、電気をあてたり温めたりして問題はないのだろうかと、わたしは不安を感じました。しかし、ここで医師の見立てを否定しても仕方がありません。きょうのところは、この医師の処置を受け、明日あらためて別の病院に行こうと考えました。

 

行きがかりで痛風治療を体験

処置はリハビリルームで行われました。10人以上の患者が、ここで各々の治療を受けています。皆、毎日同じ治療を繰り返しているようにみえます。電気をあてる機械の操作は患者がセルフで行っています。患者は皆常連で、診察を受けずに、このリハビリルームに入る人が大半です。

最初は、低周波の電気刺激治療器の前に座らされました。2本1組で5系統の吸盤型の通電端子がついた装置です。消毒液の沁みた脱脂綿で患部を拭き、周りに1つずつ吸盤をつけていきます。すべての吸盤を患部につけた後、5系統のチャンネルのつまみをそれぞれ回し、痛みを感じる直前に調整します。血管拡張と血流改善を促すものです。「明日からは自分で吸盤をつけて使ってくださいね」と看護婦さん。なんで痛風の治療を受けているのだろうか、という疑問を抱え10分間、電気刺激に身を委ねました。

次は、患部に光をあてることで症状を緩和する光線治療器を使いました。8分間ただ終わるのを待っていましたが、ほんのり温かいだけです。患部は、もともとの赤い腫れに加えて、先ほどの電気刺激治療器の吸盤の痕が痛々しく見えます。タイマー音が鳴ったあと、ここでも看護婦さんが「明日からは自分であててくださいね」と笑顔で言いました。もう明日は来ないというのに。

最後に、静脈注射をされました。「これは何の注射ですか」と看護婦さんに尋ねると「血流を改善するものです」と答えました。果たして本当でしょうか。もうこの時点で、詳しく聞く気もありませんでしたので「あ、そうですか」とだけ答えて身をまかせました。

一通りの治療が終わると会計。特に薬の処方はなく、湿布をもらって、全部で1700円の負担でした。初診料と湿布、電気、光線、静脈注射の合計の割に安いとは思いましたが、診察が杜撰では意味がありません。こうしてK整形外科での痛風を仮定した治療は終わりました。結局、この整形外科では、お金を払って足の痛みと腫れをひどくしてもらったことになります。

 

翌日あたらめて内科を受診

その晩は、湿布を貼って寝たものの左足全体が疼き熟睡できませんでした。翌日、出社して最低限の仕事を済ませてから、職場近くのS内科を受診しました。内科であれば、血液検査をしてくれるはずだろう、という判断です。受付で足の腫れについて説明し、受診可能か確認しました。「診察できる」とのことでしたので、待合室で1時間ほど待ちました。

名前が呼ばれ診察室に入ると「足を見せてください」と言われ、触診されました。それから医師は「これはやはり整形外科にかかった方が良い」と言いました。痛風なら処置ができるが、痛風とは診断できないということでした。「この時間なら、まだI高校近くのI整形外科が受診できるはずです。この診療はナシということにして、このままそちらに向かわれてはどうですか」と勧められました。

 

結局S内科では診察できず

S内科では、そのまま保険証が返され支払いもありませんでした。そして、わたしはそこから500mほどの整形外科に向かいました。整形外科は、高校という市内トップの公立高校の南にあります。午前11時40分くらいだったでしょうか。午前診療の終わりの時間が近いにも関わらず、第一駐車場の空きはわずかでした。たくさんの患者が受診しているようです。

 

I整形外科で病名が明らかに

I整形外科の受付で初診の旨を伝え、保険証を提示しました。問診票を記入するのも3回目となれば慣れたものです。速やかに記入し提出しましたが、前日に他の整形外科を受診したことは伏せておきました。受付で41番のプラスティックの番号札を渡され、待合席に座ります。整形外科は、採光のよい明るく清潔感のある建物です。前日に受診したK整形外科は、老人ばかりでしたが、整形外科は高齢者だけでなく、学生や会社員、主婦など、さまざまな人たちが待合に座っていました。同じ市内の整形外科でも患者の層(客層)がずいぶんちがうことに驚きました。

1時間ほど待ったでしょうか。午後1時前に、ようやく名前が呼ばれました。診察室には、わたしよりも少し年上、50代と思われる医師が問診票を読んでいます。問診票をもとに医師はいくつかわたしに症状について尋ね、患部を見せるようにいいました。履物と靴下を脱ぎ、専用の台の上に腫れた左足をのせて、触診をされました。傷の有無、痛さの程度、炎症の状態を確認した後、こう言いました。

 

やはり蜂窩織炎か!?

「これは、蜂窩織炎(ほうかしきえん)の可能性が高いですね。ただし、骨の異常等があるといけませんからレントゲン撮影をしましょう。痛風であれば結晶が写るかもしれませんが、痛みが出てからの期間と程度から痛風の可能性は低いと思われます。レントゲンの後は、血液検査を行います。レントゲンと採血が終わったら、もう一度、診察室にお呼びします」

診察室を出たとき、わたしはようやくホッとしました。蜂窩織炎という言葉が医師から出たからではありません。きちんと症状を見て、複数の病名を検討し、検査を重ねて診断をする医師のロジカルな姿勢に安心したのです。当たり前といえば当たり前のことですが、町の個人の整形外科の中には、わたしが最初に受診したK整形外科のようなところが少なくないのかもしれません。たまたま、わたしはネットで痛風と蜂窩織炎の知識を得ていたので、別の整形外科を受診する気になりましたが、多くの人は、医師の診断を鵜呑みにして(それは患者としては正しい姿勢のように思われますが)、見当違いの治療を続けることも考えられます。これはとても怖いことです。

 

レントゲン撮影と血液検査

レントゲン室では、左足の甲の正面とくるぶしにかけてやや足を傾けた写真の2枚を撮影しました。そして処置室で採血をしました。レントゲンと採血が終わると、さすがに待合室の人数も減っています。5分も待たないうちに再び診察室に呼ばれました。

診察室に入ると医師は「Oさんのレントゲンは…」と言いながら、PCを操作し表示されているわたしの名前をクリックしました。机の上のモニタに左足のレントゲン画像が表示されました。医師は念入りに画像を確認した後、画像を指示し「骨の異常はまったくありませんね」と説明しました。

「血液検査の結果は明日になりますが、炎症があれば白血球や好中球の項目が高くなります。しかし、それに先立って、今日は細菌と炎症を抑える薬を出します。足の消毒と包帯を巻き、会計を済ませたら処方箋を持って薬局に寄ってください。薬はかかさずに、また、入浴はシャワー程度なら大丈夫です。患部を濡らさないように。それでは、明日また」と言われました。

 

抗生物質と解熱鎮痛消炎剤を処方

消毒と包帯を巻いてもらい会計を済ませると3,500円程度の支払いでした。処方箋をもらい、その足ですぐ南にある調剤薬局にも寄りました。処方された薬は、フロモックス錠、ロキソニン錠、レパミピド錠。内容は、抗生物質と解熱鎮痛消炎剤、胃粘膜を守る胃薬です。薬代は7日分で1000円もしなかったと思います。これらを毎食後、欠かさず飲むことになります。

その日の昼食後から薬を飲み始めましたが、やはり蜂窩織炎だったのでしょう。効果テキメンでした。歩くのも大変だったのに、その日の就寝時には、痛みの範囲が狭くなり、赤い腫れも、しだいにひいてきています。腫れの中心部から遠いところは、痛みからかゆみにかわりつつあります。特に仕事をするのには差しさわりのない状態にまで回復しました。最初に左足に不調を感じたときに、整形外科を受診すれば、良かったのですが、今となっては仕方がありません。

 

血液検査では好中球が増加

翌日の8月3日は、仕事が終わってからI整形外科の夕診を受診しました。相変わらず待合室は混んでいます。診察券を出してから診察室に入るまでに1時間半ほどかかりました。診察室に入ると、医師は、患部の状態を確認し、昨日の血液検査の結果の説明をはじめました。

「白血球数は正常範囲にありますが、好中球が増えています。感染症や炎症があるとこの数字が増えます。36~70%が基準値ですがOさんは82%ありました。今は、お薬を飲んで細菌を減らしていますが、抗菌作用のある点滴を数日続けることで治りやすくなると期待されます。今日からしばらく点滴を打ちませんか」と尋ねました。わたしは「お願いします」と答えました。

 

現在は毎日点滴を打ちに通院中

点滴は処置室で行われます。フルマリンキットという薬で10分から15分かかります。今、この記事を書いているのは8月5日で、すでに3回の点滴を受けています。足の腫れは、引いたりぶり返したり。痛みは、ほとんどありませんが、足を曲げたり伸ばしたりすると違和感があります。完治にはしばらく時間がかかりそうです。夏休み後半までに治れば良いのですが。

蜂窩織炎は目立つ傷口がなくても、毛穴や虫さされなどからの細菌感染で発症することもあるそうです。特に夏場は発症しやすく、I整形外科では、わたしのほかにも蜂窩織炎にかかっている若者を目にしました。打ったりひねったりした覚えのない足の腫れは、様子を見たり放置しがちですが、早めに整形外科を受診するのが良いと思います。

【追記2017.9.29】蜂窩織炎の治療は、その後、点滴を2回打ち、服薬を8月中旬まで続けました。お盆明けには、腫れもひき、8月下旬には痛みも消えました。9月29日現在は、すっかり完治しました。