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ネットで絶対に失敗しない方法│11歳からの正しく怖がるインターネット【書評】

ネットの友だちに会えない理由をたずねる女子中学生

子どもにいつからスマホを持たせるか。SNSで炎上してしまったらどう対処すればよいか。ネットを安全・安心に使うための「絶対に失敗しない方法」はあるのか。こうした疑問に答える本を書店で見つけました。

小木曽健著「11歳からの正しく怖がるインターネット」です。著者は、グリー株式会社のネット啓発部門の責任者として全国で年間300回の講演をし「ネットの正しい怖がり方」を伝える活動をしています。

書名に「11歳からの」とありますが、11歳向けに書かれているわけではありません。ネットを積極的に使い始める年齢が11歳、小学5年生くらいという想定で、保護者向けにネットの正しいつきあい方を教える内容です。

本書は4章で構成されています。

  1. ネットで絶対に失敗しない方法
  2. SNS「大人のたしなみ」
  3. ネットと子育て・ネットと家族
  4. ネットと未来

 

ネットで絶対に失敗しない方法を知っていますか?

1章では、正しくネットを使わなかったために起こった過去の炎上事例を紹介。炎上が起こるメカニズム、炎上した際に起こる数々のリスクを取り上げています。また、ネットに投稿された内容から、どのように「個人情報が特定されてしまうのか」その特定経路も解説されます。

SNSは友達限定にしているから炎上しても大丈夫と見くびってはいませんか。友達限定の閉じた関係性の中で投稿した内容でも、誰でも簡単に使えるある機能で、またたく間に全世界に拡散してしまいます。

1章では、こうしたネットでの失敗の怖さをはじめ、うっかり行っている個人情報を特定されてしまう行為、炎上した場合の対処法を述べ、そもそも論として、こうした事態に陥らないための「ネットで絶対に失敗しない方法」を伝えます。

なぜSNSではあなたのキャラがバレるのか

続く第2章では、SNSの正体に迫ります。3.11震災時のTwitter事情からSNSが急速に普及した理由。またSNS普及以前に存在したSNS的なものを引いて、SNSとは何か、その実態を明らかにします。

特にこの章で興味深かったのが「SNSでキャラがバレる」の項目です。引用します。

 

私たちは、たいてい誰かに何かを気遣いながら生きていて、完全な一人ぼっちで「何かをする」場面は思っている以上に少なく、そして、その数少ない場面の一つが……ネットやSNSなんです。

人間は一人ぼっちになると、本質や本性が表に出てきます。画面の向こうに相手がいるSNSだって、文字を入力しているその場にいるのは、たった一人の自分。一人ぼっちで書いているからこそ、SNSにはその本人のキャラが反映されやすいんです。匿名性どころか、その人の本当の姿が投稿内容にギュッと凝縮される道具。だから「あの人の意外な一面」が見えちゃうんですね。

ふだんの日常よりも、もっと謙虚に気を使いながら使ってちょうど良いくらい、自分が丸裸になる道具、それがSNSです。 

 

本章では、この後にSNSの発信で起こるケンカについて解説します。本性をさらけ出した状態で目隠しをして文字で相手と殴り合う状態、これがSNSでのケンカです。目隠しをされているので当然、手加減ができません。SNSの揉めごとが、致命的な結末に向かう理由がここにあります。

後半では、SNSの乗っ取りや誤爆、また自分の死後のSNSデータの管理についても言及されています。

子どものスマホ所有率といつから持たせるか?

3章では、ネットと子育て・ネットと家族について解説されます。たとえば、小学生のスマホ普及率の実態はどの程度か。学校が把握している数字よりも実際は、ずっと高いことが多いそうです。

こうした子どもを取り巻くネット環境の現実を知り、その上で子どもにとって何が問題なのかを考えていきます。特に驚いたのが、学校の教室で、マスクをしている生徒が多いときに疑われるのが「教室の様子をネット中継している可能性」。これは親世代では想像できませんね。

なぜネットで知り合った人に会ってはいけないの?

さて、この章の後半に書いてあるのですが、もしあなたのお子さんが「ネットで知り合った人には、会ってはいけないんですか?」と聞いてきたら、どう答えますか。問答無用で「ダメ」と答えるのは簡単ですが。著者はこのように答えるそうです。

 

「生きていく中で、誰かと知り合うのは自然なことです。それは、日常でもネットでも同じこと。だからいつの日か、中学生がネットで知り合った人と実際に会う、というのが当たり前の時代になるかもしれません。

でも今はまだその時代じゃないんです。その理由は、実生活で知り合った人と遊びに行って、その結果、殺されてしまう確率より、ネットで知り合った人に会いに行って、その結果、殺されてしまう確率の方が、今はまだ高いから。

殺されるかもしれないけど「会いたい」人なんて、いないでしょ? だから、ネットで知り合った人と会うのは、まだ危険な時代なんです」

 

この章では、このほかにも子どもを狙った「架空請求サギ」、18歳選挙権とネット選挙運動解禁に伴う「17歳の選挙違反」などの話題を取り上げます。

4章は、生まれたときからネットに囲まれて育ったデジタルネイティブと呼ばれる人たちが作る社会像についての解説です。章の後半はAIの普及がもたらす社会に対する著者の展望が書かれています。

AIは仕事を奪うのか、AIは人の命を脅かす存在になりうるのか。これらについては、事例をあげて、さほど悲観する必要はない、というのが著者の見解です。

SNSはただの道具。特性を知り正しく使えば怖くない

最後にこの本に一貫している主張なのですが「ネットもSNSも単なる道具にすぎない」ということ。たとえば、料理に使う包丁は、使い方を誤ればケガをしますが、正しく使えば重宝するものです。

危ないのは包丁ではなく、包丁の「使い方」です。どのような道具も正しい使い方をしなければ危険を伴います。自転車だって交通ルールを守らなかったり整備不良だったりすれば危険です。

しかし、包丁も自転車も「皆が正しい使い方と誤って使った場合のリスク」を知ったうえで活用しています。ネットやSNSも本質的には同じです。正しい使い方とリスクを知ってうまく活用すればいいのです。

ただ現在は、ネットの歴史が浅く「正しい使い方」と「謝って使った場合のリスク」の理解が広まっていません。その結果、過剰に的外れに怖がったり、大丈夫だと高を括って取り返しのつかない失敗したりするケースがあとを絶たないのです。

この本を読んで、ネットを「普通の道具」として使う知識を身につけ、お子様とネットの使い方について考える機会を持たれてはいかがでしょうか。見出しの答えもすべて本書に書いてあります。