新聞と広告の向こう側

新聞のつくり方・広告を読み解く視点

訃報・死亡広告の書き方【新聞・黒枠】

訃報・死亡広告の書き方

訃報は、葬儀の主催者*1が、ご会葬者に向けて発信するものです。

一般に新聞広告の臨時もの扱いで、訃報を掲載します。臨時ものとは、掲載日の前日までに急きょ申し込み、掲載するもの。

臨時ものは、通常の営業広告に比べて掲載料が高額ですが、即時性に優れています。

この記事では、訃報(死亡)広告の書き方を説明します。

訃報の一般的な構成

訃報は、本文、案内文、掲載日、主催者の住所、名前、会社名の順で書きます。

見本を1つ示します。
個人葬の訃報の例です。

ご不幸・死亡広告見本

ご不幸(死亡)広告は、句読点を入れずにその分だけ空けて書きます。

句読点は、目上の者が目下の者に文意を下すときに読みやすいよう慮ったものなので礼に欠ける面があるからです。

一般的な訃報は、次のような流れで構成されています。

本文の内容故人を特定する肩書・名前
死亡に関するお知らせ
主催者からのあいさつの言葉

案内文おって書き(葬儀について)
通夜・告別式の日時・式場
断り書き(辞退、服装、時間)

掲載日の日付

主催者の住所・名前・会社名
駐車に関する断り書き

葬儀の種類

訃報は、葬儀の形式で個人葬、社葬(寺葬)、合同葬に分けられます。

個人葬個人(喪主家)が主体となって催行する葬儀
社葬(寺葬)会社・団体などが主体となって催行する葬儀
合同葬会社・団体などが共同で催行する葬儀

葬儀の種類で記載内容が変わります。次項で各項目の具体的な記載内容を説明します。

訃報の本文の書き方

故人の肩書・お名前

文の書き出しは、誰のことについての連絡なのかが重要になります。故人の肩書(個人葬の場合は喪主の方からの続柄)・名前からはじめます。

個人葬の場合

喪主からみた続柄(父・母・兄・長男)→故人のお名前→肩書→儀

故人の公の肩書を併記する場合は、名前の後にカッコ書きにして入れます。

社葬(寺葬)の場合

弊社(当山)→役職など公的肩書(続柄)→故人のお名前→儀

合同葬の場合

企業団体名および役職→故人のお名前→儀

授勲などの名誉称号は、公的肩書に優先して並列に入れたり(社葬)、個人葬の場合は、続柄に続けたりします。また芸名・通称などを入れる場合は、名前の後にカッコ書きで入れます。

死亡に関するお知らせ

特に差しさわりのない限り、死亡日時、満年齢もしくは享年(数え年)を文中に記して関係者の便宜をはかります。

年齢は一般的に満年齢を標準としますが、宗教関係者などで享年(行年)が適当とされる場合は「行年〇歳」と表します。

死因・場所は、葬儀との関係が薄いため訃報では省略する場合が多いです。

死亡に関する言葉について

事実をありのままに伝えていることから「死去いたしました」を標準とします。

また、長期の入院などで不在期間が長く心配をおかけした場合などでは、死亡日時の前に「かねて病気療養中のところ」などと挿入します。

【例】死亡に関するお知らせ

「死去いたしました」以外の言葉

永眠いたしました宗派によっては教義と矛盾することもあり標準として使用しませんが、優しい響きもあるので特に女性に対して用いることがあります。
天寿を全ういたしました平均寿命を鑑みて、九十歳以上の方に用います。
遷化いたしましたひろく僧侶の方に使われる言葉ですが、宗教によっては厳密に身分で区別しているところもあります。仏教用語として「四代不調により~遷化いたしました」「命終いたしました」とすることがあります。
往生の素懐をとげました宗教関係者などで住職でなく遷化とするにははばかられるときや、謙遜した表現としたいときに用います。
帰幽いたしました神道での死を表す表現で神主などに用います。
急逝いたしました主に不慮の事故など、予期しない不幸のときに用います。

【注意】逝去いたしましたは、死去の敬語。身内の方が一人称で使うと自画自賛となり、敬語として不適切になりますから使いません。

主催者からのごあいさつ文

主催者からのごあいさつ文は定型です。
故人の男女別、一般の方か僧侶かであいさつの文面は決まります。

故人が男性ご厚誼に
故人が女性ご厚情に
故人が僧侶ご法愛に

ご通知申しあげますの「あげます」は平仮名で表記します。

案内文の書き方

案内文は、上記の「おって書き」「なお書き」から、掲載日の記載までを指します。

この部分は、本文から1文字下げ、掲載日はさらに1字下げて書きます。

「おって書き」の書き方

上記の【A】の部分を「おって書き」といいます。この部分は、個人葬、社葬、寺葬、合同葬で書き方が変わります。

個人葬おって通夜ならび告別式は左記のとおり相営みます

社葬おって通夜・告別式は社葬により左記のとおり相営みます

寺葬おって通夜・告別式は寺葬により左記のとおり相営みます

合同葬おって通夜・告別式は株式会社〇〇(←社名)と▲▲家(←喪主家)との合同葬により左記のとおり相営みます

「記」

おって書きと日時、場所の案内の間に「記」を書きます。上の見本を参考に記入する位置を確認してください。

葬儀の前に密葬が済まされた場合

おって書きの前に密葬の文言を加えます。

なお密葬の儀は〇月○日近親者のみにて相済ませました おって告別式は~

葬儀の日時・場所などの案内

箇条書きで、通夜、告別式(葬儀)、式場の案内をします。この部分は、箇条書きですので例外的に読点を入れます。

個人葬、社葬、合同葬は、一般に葬儀と表記しないで「告別式」【B】を標準とします。寺葬は「葬儀」とします。

式場は自宅の場合は「場所」に変えます。式場(場所)の次の行は尻揃えで住所と簡単な目印を記載します。

なお、葬儀の形式(宗教)で通夜、告別式、香典の表現が異なりますので、下記の表を参考に適切な表現を用います。

葬儀の形式による表現の違い
一般的な仏式神式キリスト教式
通夜通夜祭前夜式
告別式(葬儀)葬場祭葬送式
ご香典玉串料御花料

お断りの書き方

お断り【C】は下記のように書きます

はなはだ勝手ながら〇〇の儀は固くご辞退申しあげます

お断りは「ご香典」「ご供花」「ご供物」のうち受け取らないものをすべて記載します。

すべて受け取る場合はお断りの記載は不要。

日付(掲載日)

案内部分の文末には、1字下げて掲載日の日付を加えます。

主催者のお名前・住所

個人葬の場合

個人葬の場合、喪主の住所、喪主のお名前と続けます。

住所は自宅で式を行わない場合、留守になりますので防犯上の理由から町名までに留めておきましょう。

喪主や故人の兄弟などでお名前を列記する場合は、「妻(夫)」「男」「女」「友人代表」「親戚一同」などと書きます。

社葬の場合

社葬の場合、会社の住所、会社名、(葬儀委員長 お名前)、喪主のお名前、列記するお名前を入れます。

大規模な葬儀の場合、葬儀委員長を立てることもあります。この場合は、喪主の名前の前に「葬儀委員長 ○○○○」と記載します。

寺葬の場合

寺葬の表記は、個人葬と社葬の中間のような書き方になります。

式場の住所、山(院)号と寺名、(葬儀委員長)、喪主のお名前、檀徒(信徒)一同などを列記します。

 

駐車に関するお断り

駐車に関するお断りがある場合は、訃報の文末に記載します。

自宅で行う通夜、葬儀は、十分な駐車スペースが確保できない場合がありますので下記のとおり記載します。

駐車に関しご迷惑をおかけすると存じますので悪しからずご了承の程お願い申しあげます

まとめ

以上、訃報の書き方について説明しました。

訃報は、定型の広告原稿なのでルールを覚えてしまえば、誰でも同じように書くことができます。

詳しくは、葬儀社や新聞系の広告代理店にお問合せください。

最後に、訃報の料金例ですが、日経新聞の全国版に掲載する場合、1㎝1段が80,000円です。

冒頭の8㎝×2段の訃報の場合は、80,000円×8㎝×2段=128万円(税別)。

尚、つけ広告というのは、葬儀を取り扱った葬儀社が出す広告です。

*1:個人葬の場合は喪主、社葬・合同葬の場合は会社及びその代表者