新聞は、ふだん一紙しか読まない人が多いと思います。しかし、銘柄の違う複数の新聞を読み比べると、事実の伝え方が異なることに気づきます。
事実のどこに焦点をあてて伝えるか。
ここに新聞社の主張が透けて見えます。ここでは、客観的な記事に隠された「主観」の見抜き方*1を説明します。
見出しで決まる読み手の印象
2004年9月3日付で、日経と朝日が「吉野家」の売上を報じました。同日の見出しは次のように書かれています。
- 吉野家、8月売上27.8%減「新定番」効果いまひとつ(日経)
- 吉野家の売上高 前月比7.4ポイント改善 8月来客数も(朝日)
日経の読者は、吉野家が「売上高減」で苦戦をしていると思い、朝日の読者は、吉野家は健闘していると思うのではないでしょうか。実は記事の本文では、どちらも同じ情報を伝えています。
読み比べで新聞の主観が見える
ただし見出しでは、日経では前年同月比の数字を大きく取り上げ、朝日では、前月比で数字を評価しています。「どの数字を大きく扱うか」という切り口に新聞社の「主観」が透けてみえます。
同じ出来事を書いても書き方で読み手に与える印象は大きく変わるのです。新聞を一紙しか読まない人は、この違いに気づかないかもしれません。
ひとつの出来事を読み解くとき、複数の新聞で比較したり、ほかのメディアに目を通したりする意味が、ここにあります。
出来事の伝え方で世論は変わる
先述の例では、日経も朝日も同じ出来事の別の側面を伝えているにすぎません。誤報ではないのです。これは、コップに入った水の問答で「もう半分しか水がない」「まだ半分も水が残っている」と2つの捉え方があるのと同じです。
伝え方で読み手の捉え方は変化します。新聞に限らず、メディアは、この性質を利用して客観を装いながら、読み手の思考に影響を及ぼすのです。
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*1:この記事は「池上彰の新聞勉強術・文春文庫」を参考にしています。