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置き勉はなぜ禁止なの? - 学校が解禁をためらう3つの理由

置き勉が禁止されている理由

教科書や学用品を自宅に持ち帰らず、学校に置いておくことを「置き勉」といいます。正式名称は「置き勉強道具」、これの略です。

2018年9月文部科学省は通学時の荷物の重さや量を工夫して児童生徒の負担を軽減するよう促す通知を全国の教育委員会に出しました。

置き勉を巡っては、歓迎する子どもや保護者の一方で防犯上の問題や家庭学習への影響を懸念する声も出ています。

 

置き勉が禁止されている理由

  • 家庭学習で教科書を読む習慣が身につかない
  • 置いて帰ると紛失したりイタズラされたりする可能性がある
  • 毎日持ち帰ることで教科書を大事にする感覚を学ばせたい

家庭学習促進と防犯上の問題、精神論が置き勉禁止の理由。

 

Twitterではこんな精神論も投稿されています。

置き勉賛成者の声

なぜ宿題で使わない教材を毎日持って帰る必要があるのかわからない。骨が歪んだり暑さで倒れたりする心配もある。

通学用リュックは、教科書や副教材でパンパン。試しに量ってみると10kgを超えていた。通学には20分以上かかり、水筒や弁当などの荷物も多い。

https://twitter.com/coco17722660/status/1042756575113371650

昔学校に置いていたもの

習字道具、図工(絵具)、算数用のお道具箱、家庭科裁縫箱、リコーダー、傘などは、昔は学校においていました。

しかし最近は、こうした副教材も多くの学校では持ち帰るよう指導されます。ランドセル以外の荷物も増え、重量は増す一方です。

脱ゆとり教育で教科書は1.5倍

置き勉解禁が望まれる背景には教科書の大型化の影響もあります。

教科書のページ数が増えた理由は、2011年からはじまった脱ゆとり教育のためです。

2002年 2015年
3090ページ 4869ページ

上は、ゆとり教育時代2002年の小学校の教科書ページ数合計と脱ゆとり教育に舵を切った2015年のページ数の比較です。

わずか10年で教科書のページ数が1.5倍以上に増えています。

また教科書も大型化しています。かつては中学年以上はB5判教科書でしたが、現在はすべてA4判です。ランドセルのCMでA4対応を謳うのは、こうした背景があります。

学校が置き勉を解禁できない理由

文科省が置き勉解禁の通達を出しても現場の学校ではすぐに解禁に舵を切れません。

主な問題は3点あります。

  • 収納スペースが足りない
  • 防犯設備が不十分
  • 上記の対策をする予算の問題

学校のロッカーは、ランドセル1つ分程度の収納スペースしかありません。物理的に副教材を含む荷物を置いておくことができません。

また、ロッカーは棚でしかなく、扉や鍵がありません。終業後、教室に施錠をしても、紛失の報告はなくなりません。

保管場所の確保し防犯対策を講じる予算をどこから捻出するかという問題もあります。

文科省「デジタル教科書」で対応

こうした教育現場の声もあり文科省では、来年度(2019年度)からデジタル教科書の使用を小中高で認める方針です。

デジタル教科書を導入することで、教科書の冊数が減り教材の持ち運びの負担が減ると期待されます。

しかし、隣国の韓国では2013年にデジタル教科書の使用が解禁されていますが、利用率は3割程度にとどまります。

利用校も従来の紙の教科書を併用しており、荷物の負担軽減には直結していません。

また、デジタル教科書の導入には、タブレット端末を誰が買うのか、誰が持つのか。どこが負担するのかという問題もあります。

まとめ

以上、置き勉に関する情報をまとめました。
文部科学省が持ち物の負担を減らす通達を出しても教育現場では、即座に対応できる状況ではないようです。

雨の日に教科書を詰め込んだリュックを背負い、鈴なりの荷物を運ぶのは安全面の不安があります。

せめて副教材や書道や絵の具セットなどは教室に置いておけると良いと思います。