新聞に使う報道写真の原点は「ありのままを伝える」ことです。限られた紙面上、いかにコンパクトでわかりやすく撮るかがポイントです。この記事では、新聞に使う写真について説明します。
ありのままを伝える報道写真
取材現場では、できる限り人を写し込むようにします。人が写っていることで写真に動きが生まれ、周囲の大きさとも対比できるからです。現場では、周辺のビルや看板、道路の様子など多くの情報を一枚に写し込みます。
ニュース写真と企画写真
わかりやすく現場の状況を伝えるのが「ニュース写真」なら、インパクトを追求するのが企画写真です。企画写真では、背景にある社会性や人間性を説明的にならないように狙います。一枚の企画写真を撮るために何日も粘ることもあります。
プライバシーと肖像権に注意
新聞に掲載する写真は、プライバシーと肖像権(しょうぞうけん)にも注意を払いましょう。学校の行事を撮影する場合は、事前に校長先生の許可が必要です。「子どもを写真に写してほしくない」という考えの父兄もいます。こうした場合は、その子が写らないようにフレームアウトします。
実際の新聞写真でもトラブルになった例があります。無差別殺傷事件の現場で、花束を供えに来た母子を撮影し掲載した新聞がありましたが、後日、父親から強い抗議がありました。必ず承諾を得てから掲載するようにしましょう。
歩道や公園、駅など公共の場で撮影するときも肖像権を侵害しないように留意します。
新聞の写真は構図を重視する
構図とは、各部分を適当に配置してまとまった全体を作り上げることをいいます。さまざまな設定のできるデジカメで報道写真を撮影する場合「シャッター優先モード」で撮るのが、もっとも失敗が少なく安全です。
シャッタースピードを固定すると、明るさに応じてカメラがレンズの絞りを調整してくれます。*1ピントや露出はカメラ任せで「構図」に専念しましょう。
カメラを構えたら、その位置から「三歩前に出てシャッターを切る」。これが無駄を省いて伝わる写真を撮影するコツです。
デジカメと速報性
報道写真がデジタルカメラを本格的に導入したのは意外に早く1996年のアトランタ五輪の頃といわれています。1998年の長野五輪では、多くの新聞社がフィルムカメラとデジカメの両方を用意し使い分けていました。現在は、報道の分野では完全にデジカメに移行しています。
記者は撮影したその場でパソコンに画像を取り込み、キャプション*2をつけて新聞社に写真データを送信します。締め切り間際の取材では、撮影からキャプションつけ、送信までを短時間で処理します。
写真は、新聞紙面の構成する重要な要素の一つです。事実ありのままを伝え、視覚的な情報の伝達を図りましょう。