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書評「荒木飛呂彦の漫画術」 - 絵が下手でも売れる漫画家とは?

ロートレック│黒いボアの女

うまい作品が人気を集めるとは限りません。絵でも文章でも漫画でも、精巧に作られた作品で「売れない」ものはよくあります。逆に、技術は稚拙でも、人気を集める作品があります。

優れていても売れない、稚拙でも売れる。これらは、技術のほかに、どんな違いがあるのでしょうか。この違いについて、集英社新書「荒木飛呂彦の漫画術*1に書かれていました。ご紹介します。

 

荒木飛呂彦が言う売れる漫画とは

絵が下手でも人気を集める漫画には「誰が描いたのか」、絵柄*2で作者がわかる性質があります。

実際、売れている漫画家は、掲載誌や作品が変わっても、一目で「作者」が予測できます。これは絵のうまい下手とは無関係です。

絵のうまい漫画でも、作品を見て、作者が思い浮かばないものは人気にならないのです。

荒木飛呂彦氏の絵は、初期の作品から変わりなく、彼が描いたとわかる独自性があります。たい廃的な絵柄は、ロートレック*3を思わせますが。

 

作品と作者のシンボル性

作者が思い浮かぶ作品のシンボル性。これはマーケットで支持される重要な要素です。これは漫画だけでなく、すべての芸術、創作にいえるのではないでしょうか。

今、書いているブログの記事も同じです。注目を集めるものは、文章の論理性や表現のうまさよりも「誰が書いたものか」書き手が明確です。

あなたのブログは、読者が読んで「あなたが書いたもの」とはっきりと思い浮かべることができますか。もしも答えが否なら、文章力よりも、磨くべきは、あなたらしさ、オリジナリティといえましょう。

 

すべてのクリエイタにおすすめ「荒木飛呂彦の漫画術」

集英社新書「荒木飛呂彦の漫画術」は、漫画を描く人だけでなく、創作に関わるすべての人に気づきを与えてくれます。

ブロガーにとっても、物語の構成方法や短期間で読者に興味をもたせ、長期にわたって引きつける手法など、示唆に富みます。特に、浦沢直樹の「漫勉」*4が好きな人におすすめです。

 

*1:荒木飛呂彦は日本の漫画家。代表作は「ジョジョの奇妙な冒険」

*2:その作者の絵の雰囲気。画風

*3:19世紀後半-20世紀前半のフランスの画家。アイキャッチはロートレックの「黒いボアの女」

*4:漫画家の浦沢直樹がプレゼンターを務め、日本の漫画家の執筆現場に密着し、作品制作過程を追うNHK Eテレのドキュメンタリー番組