かつての上司や先輩が、定年後、嘱託社員として再雇用され、あなたの部下になるということは、今のご時世よくあります。
こうした年上の部下の接し方に苦慮している人も多いのではないでしょうか。
この記事では、業績向上につながる経験豊富な年上部下の接し方・指導のポイントを5つご紹介します。
年上部下の接し方のポイント
敬意を持って接しプライドを守る
部下とはいえ年長者に対しては敬意を忘れないことが大切なルールです。
相手からすれば、上司が自分より年下というだけでもおもしろくないかもしれません。
褒める以前に、話すときは敬語を使い、敬意をもって接しましょう。
その意味でも、年上の部下を呼ぶときは「佐藤さん」「鈴木さん」というように姓に「さん」づけで呼ぶのが基本です。
年下の部下を「佐藤課長」「鈴木主任」と肩書きをつけて呼ぶ場合もありますが、これはあまりお勧めできません。
自分よりも若い上司から肩書きつきで呼ばれると、いやでも自分はポジションが下なのだと意識させられることになるからです。
人によっては「チョウさん」「スーさん」といったニックネームで呼ばれることを喜ぶ場合もあります。
こうした呼び方は、その部署の長老的な存在というニュアンスがあり、親しみが持てる呼び方といえます。
しかし、人によっては、からかわれていると受け止めることもあります。
相手の性格や互いの関係性、職場の気質などを踏まえて、呼び方を決めましょう。
些細なことも相談して年上部下を立てる
相手は年上ですから、部下とはいえ相手を立てることが大切です。
ちょっとしたことでも相談し、意見を求めるといいでしょう。
相談するのは信頼の証です。
また、相談することは相手に感謝するきっかけにもなります。
たとえば「今度の歓迎会、どこでやりましょうか。どこかいい店ご存じありませんか」などと相談してみましょう。
相手が「○○という居酒屋なんてどうでしょうか」と答えてくれたら、すかさず「ありがとうございます」と感謝できますね。
さらに宴会後には「○○さんがいい店を紹介してくれたおかげです。ありがとうございました」とあらためて感謝を伝えることもできます。
感謝の言葉には、相手の存在をたたえる意味があります。
言われた側はうれしいものです。
要望や意見は褒めてから伝える
「昔のやり方じゃダメなんですよ。佐藤さんにはもう少しバージョンアップしてもらいたいんです。確かに佐藤さんのこれまでの実績は認めますが…」
年下の部下に対して、このように言ったとしたらどうでしょうか。
最初に「昔のやり方じゃダメ」と否定されているため、「バージョンアップしてもらいたい」という言葉は、相手の耳に入らないでしょう。
相手に伝えたいもっとも重要なことは「バージョンアップしてもらいたい」です。
その本題が相手に伝わらないのですから、適切な言い方とはいえません。
同じことを伝えても、最初にほめ言葉を使えば、印象はまったく違ったものになります。
「佐藤さんのこれまでのご活躍は私たちには到底まねできません。ぜひバージョンアップをはかってもらい、さらに実績を上げていただきたいと期待しています」
このように伝えれば、相手は抵抗なく、意欲的に課題に取り組んでくれるでしょう。
年下の部下には要望や忠告などは伝えにくいものですが、本題に入る前にまず褒めてあげれば、相手の心は柔らかくなり、次の言葉も受け取りやすくなるのです。
年上部下の経験・趣味・家族を褒める
年長者の強味は経験です。
経験をきちんと承認してあげることが大切です。
たとえば「職人技ですね」「とても私にはまねできません」「熟練の技ですね。後輩にも見習ってもらいたいです」など、経験をたたえる褒め言葉は、言われてとてもうれしいものです。
経験のほかに、仕事以外の心がけている部分、趣味や家族など、自慢にしている事柄を褒めるのもひとつの方法です。
「ゴルフ、シングルの腕前ですよね。今度、教えてください」と相手を立てて教えを請うたり、ペットをかわいがっている人には「ワンちゃんかわいいですね」と共感したりしましょう。
息子さんや奥さんが自慢であれば、「息子さんいい青年ですよね」「奥さんおきれいですよね」と褒めるのも効果的です。
とくに、奥さんを自慢に思っている男性は意外に多く、言われた方は、照れはしても悪い気はしません。
褒め言葉ではありませんが、スマホの待ち受けに孫の写真を表示している人には「お孫さんの写真を見せてください」と声をかけると目を細めて応じてくれます。
このように相手の自尊心や愛情を上手に刺激することで風通しのいい良好な関係を築くことができます。
「若い」と言われて喜ぶ人ばかりではない
年上の人に対して「若いですね」と褒めることがありますが、「若い」と言われて喜ぶ人もいる反面、「ばかにされた」と受け止める人も少なくありません。
褒め言葉と受け止めるか、けなされたと受け取るかは相手次第です。
その人の嗜好や性格を見極めたうえで「若い」という言葉は用いましょう。
基本的には、若づくりをしている人、洋服や小物、流行などに関心の高い人は、自分が若く見えることや若々しいことを褒めてもらいたがる傾向があります。
年齢が若い人を引き合いに出し「彼より佐藤さんのほうが断然若くてバイタリティがありますよ」「赤が似合いますね。若い証拠ですよ」といった褒め方をするといいでしょう。
年上部下の経験を業績につなげよう
年上の部下は、豊かな経験をもっています。
敬意をもって接し、気持ちよく働いてもらえる関係を築くことは、あなたの大切な役目です。
- 敬意を持って接する
- 些細なことでも相談して相手を立てる
- 要望や意見は褒めてから伝える
- 経験・家族・趣味を褒める
- 適切に「若い」という言葉を用いる
これら5つの褒め言葉を駆使して、年上部下の実力を引き出し業績アップにつなげていきましょう。
先輩が部下になったら ―「定年65歳時代」のチームマネジメント
- 作者: 門脇竜一
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/02/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- カスタマーレビューを読む